26セルテートHD。
にいがたフィッシングショーで、実際に触ってきた。
率直に言う。
良いリールだ。
フルメタルボディの剛性感。
それでいて、重さを感じさせない巻きの軽さ。
完成度は高い。
ダイワの技術力は本物だと思う。
でも、私は買わない。
引っ掛かるのは、値段。
もっと正確に言えば、その値段の裏に、何の原価が乗っているのか。
中国での初期生産で、不良部品や修正作業が想定以上に膨らんだのではないか。
その予想外の原価まで、買う側に負担させようとしているのではないか。
そして生産が安定すれば、高い価格はそのままに、今度は利益になる。
あるいは、そもそも「この値段でも買うだろう」と、足元を見ているのか。
私が言いたいのは、この話だ。
そんな価格の付け方なら、乗らねぇよ。
※製造原価や不良率の内部資料を見たわけではありません。以下の価格設定・生産状況に関する話は、私自身の中国工場での勤務経験と、製品・価格・開発担当者の説明から考えた仮説です。
良いリールなのは分かる。それでも値段に納得できない
完成品の出来が良いことは、認めている。
触ってそう感じたのだから、そこを否定するつもりはない。
公式情報でも、アルミ製ローターとアルミ製モノコックボディを採用し、強い負荷を想定した作りになっている。
たとえばLT4000-CXHのメーカー希望本体価格は、税別83,000円。
税込なら91,300円になる。店頭での実売価格とは別だが、立派な高級リールだ。
仕様とメーカー希望本体価格は、DAIWA公式のセルテートHD製品ページで確認できる。
これだけの値段を付けるのだから、品質が高いのは大前提だろう。
問題は、その品質を、どんな作り方と原価で実現しているのか。
出来の良い一台を手に取っただけでは、その一台を作るまでに捨てた部品や、やり直した作業までは見えない。
私はそこが気になる。
中国製と知ったのは、開発担当者のYouTubeだった
私が見たYouTubeで、ダイワの開発担当者が、中国製であることを説明していた。
そして、品質には絶対の自信がある、とも話していた。
その説明で、私が引っ掛かった言葉。
「絶対の自信」。
普通なら、安心するところなのだろう。
でも、私は工場の原価を考えてしまった。
そこまで言い切れるなら、相当厳しく検査し、基準に届かないものは徹底的に弾いているのだろうな、と。
もちろん、これはその説明を聞いた私の受け取り方だ。
担当者が不良の多さや、原価の上振れを認めたという話ではない。
ただ、ここは分けて考えたい。
出荷する製品の品質に自信があることと、最初から無駄なく良品を作れていることは、同じではない。
検査する。
基準に届かない部品を弾く。
直せるものは修正し、もう一度確認する。
そうして基準を満たしたものだけを出荷すれば、店頭に並ぶ完成品の品質は守れる。
でも。
弾いた部品も、修正した時間も、タダではない。
完成品が素晴らしいからこそ、その裏側に掛かった費用が気になるのだ。
仮説① ダイワは、買う側の足元を見ているのか
まず、一つ目。
生産上の問題があるわけではなく、単純に強気な価格を付けている可能性だ。
セルテートという名前。
フルアルミという魅力。
そこに惚れる釣り人がいることを見込んで、
「この値段でも買うだろう。」
という価格にしているのではないか。
そうだとすれば、私は足元を見られているように感じる。
高くても売れる。
その価格が受け入れられる。
すると、それが次の値付けの基準になっていく。
今回財布を開くことが、次の高価格を後押しする。
私は、そこまで含めて買うかどうかを考えたい。
以前は、24セルテートと24ツインパワーを比較した記事で、セルテートへの期待をかなり強く書いた。
良いと思ったものは、良いと言う。
だから今回も、ダイワだから否定しているわけではない。
この値付けに、自分の金で賛成したくない。
そういう話だ。
仮説② 中国での初期生産に、想定以上の原価が掛かったのではないか
そして、私が特に気にしているのが、こちらだ。
「価格を抑えるため」だったはずなのに
開発担当者は、もう一つ大事な話をしていた。
中国製にしたのは、価格を抑えるためだという。
それなら、本来はもっと安く作るつもりだったはずだ。
でも、実際に出てきたのは、この高価格。
価格を抑える話だったのに、メチャクチャ高い。
その一方で、品質には「絶対の自信」がある。
「価格を抑えるため」と「絶対の自信」。
この二つの説明と、目の前の価格。
どうしても、私の中でつながらない。
そこで、こう感じた。
あ、生産に苦労したんだな。
安く作るつもりだった。
でも、不良部品や修正作業に、予想以上の金が掛かってしまったのではないか。
検査を徹底し、品質は守った。
その代わり、原価を思うように抑えられなかったのではないか。
私には、そういう事情があるように思えたのだ。
この推察の背景にあるのが、自分の現場経験だ。
中国工場にいたから、初期生産の不良を考えてしまう
私は以前、機械メーカーの中国工場に、経理として駐在していた。
その現場では、修正なしで日本向けの品質基準を満たす製品は、ほとんどなかった。
これは、私が経験した工場の話だ。
その経験があるから、中国で新たな製品を立ち上げる初期段階と聞くと、まずこう考える。
不良部品、相当出ているんじゃないか。
ましてやセルテートHDだ。
ダイワの看板を背負い、この価格で売るリール。
私は、メーカーのプライドを掛けた製品だと思っている。
中途半端な仕上がりを、そのまま出荷するわけにはいかないだろう。
だから検査を厳しくする。
基準に達しない部品を弾く。
修正する。
再検査する。
この作業が、当初の見込みよりずっと多くなっていたら?
安く作るつもりが、良品に仕上げるまでの費用で、思ったほど安くならなかったのではないか。
それが、私の疑いだ。
捨てた部品の代金まで、売れる一台に乗ってくる
不良部品を捨てれば、材料代も加工代も消えてなくなる。
いや。
部品はなくなるが、使った金は戻らない。
修正できたとしても、人の手と時間が掛かる。
その後には、もう一度検査が必要になる。
結局、売り物にならなかった部品や、やり直しに掛かった費用も含めて、事業として回収しなければならない。
ここで私が疑っているのは、その想定外の負担を、販売価格に織り込んだのではないかということだ。
買う側が受け取るのは、検査を通った良品一台。
でも払っている金には、その一台にたどり着くまでの不良や修正の費用まで含まれている。
仮にそうなら、
「品質には絶対の自信があります。」
と言われても、それで全部納得とはならない。
その品質を出すために、予想以上に掛かった金を、こっちに払わせようとしていないか?
そこを聞きたいのだ。
高い技術や、必要な材料に金を払うことと、想定外のやり直しを肩代わりすること。
私にとっては、意味が違う。
生産が安定したら、その分はどこへ行くのか
しかも、この話は立ち上げ時だけで終わらない。
現場は経験を積む。
不良の原因をつぶす。
作業に慣れ、修正も減る。
経験を積み、改善を続ければ、ラインは必ず安定していく。
私は、自分の現場経験からそう考えている。
最初から全部うまくいくとは思っていない。
むしろ、最初に苦労しながら、徐々に安定させていくのが生産現場だろう。
だからこそ、その先まで気になる。
不良が減る。
捨てる部品が減る。
修正や再検査に掛かる時間も減る。
一台を作るための原価は、下がっていく。
では、その時に価格は下がるのか?
もし、高い価格をそのまま維持するなら。
ほかの条件とメーカーの販売単価が同じなら、減った原価は、そのまま利益に変わる。
立ち上げ時の予想外の負担は、消費者へ。
安定してからのうま味は、メーカーへ。
……ずいぶん都合の良い話じゃないか。
メーカーが利益を出すこと自体に、文句を言いたいわけではない。
でも、もしこういう構造なら、私は最初の負担を引き受ける側に回りたくない。
ラインが育つまでの授業料を、なぜ買う側が払うんだ。
そして育った後も、なぜ同じ授業料を払い続けるんだ。
私が納得できないのは、そこだ。
中国製だからダメ、で話を終わらせたくない
中国製だから、店頭に並ぶ製品まで低品質だ。
そんな話をしているのではない。
実際に触ったセルテートHDの完成度は高かった。
それは最初から認めている。
私が見たいのは、完成品の品質と、その品質を実現するまでの原価の両方だ。
製造場所を選ぶ。
求める品質を決める。
不良や修正の発生も見込み、価格を決める。
その見込みが外れたのなら、メーカーの生産計画や原価管理の問題ではないのか。
それでも、出来上がったものが良ければ、消費者は全部受け入れるべきなのか。
私は、そうは思わない。
「品質は良いです」と「この価格に納得できます」は、別だ。
その間を、ブランド名だけで埋めないでほしい。
結論|こんな話には乗らねぇよ
仮説は二つ。
一つは、セルテートという名前と、釣り人の欲しさを見込んだ強気の値付け。
もう一つは、初期生産の不良や修正で膨らんだ原価を、消費者に負担させる値付け。
後者なら、生産が安定した後、その負担分が利益へ変わっていく構造まで見えてくる。
どちらが実際の事情なのか、私には確定できない。
ただ、この疑問を抱えたまま、
「良いリールだから。」
で財布を開く気にはならない。
私は、メーカーの値付けに、自分の金で返事をする。
完成度は認める。
技術力も認める。
でも、それで価格への疑問まで飲み込めるわけではない。
26セルテートHDは、絶対に買ってはいけない。
私は、その考えを変えない。
こんな話には乗らねぇよ。
だから、私は買わない。



コメント